大規模修繕 発注適性化で通知<国交省>~設計コンサルの「利益相反行為(マージン得ようと工作)」を提示~

投稿日:2017年02月07日 作成者:右田 順久 (3406 ヒット)

大規模修繕工事における「設計・監理方式」で、設計コンサルタントが管理組合の利益と相反する立場につくケースが報告されているとして国土交通省は1月27日、担当課長名義で関係団体に通知した。大規模修繕でトラブルや疑問が生じたときは、公益財団法人マンション管理センターなどの相談窓口の活用を周知するよう求めた。

通知名は「設計コンサルタントを活用したマンションの大規模修繕工事等の相談窓口の周知について」。住宅局市街地建築課長、土地・建設産業局建設市場整備課長名で出した。通知では、大規模修繕工事における「設計・監理方式」は、「適切な情報を基に透明な形で施工会社の選考を進めていくためにも有効であるとされています」とする一方、「管理組合の利益と相反する立場にたつ設計コンサルタントの存在が指摘されています」と具体例を示した。<下記※①を参照>
その上で昨年3月に改正されたマンション管理適正化指針で「工事の発注等は利益相反等に注意して行われる必要がある」旨が管理組合の留意事項に盛り込まれた点に言及。設計・監理方式を採用する場合は「設計コンサルタントが利益相反行為を起さない中立的立場を保つ形で施工会社の選定が公正に行われるよう注意する必要がある」とし、管理組合の取り組み例を示した。  <下記※②を参照>
相談先には公益財団法人マンション管理センター、同・住宅リフォーム・紛争解決センターを挙げている。
一方、建設労働者の社会保険未加入問題を受け、現在業界が契約見積もりに適正な法定福利費の計上と発注者の理解に取り組んでいる現況に触れ、マンションの大規模修繕工事の発注に際しても、適切な法定福利相当を含んだ額で契約を結ぶよう求めている。
通知は一般社団法人マンション管理業協会、同・日本マンション管理士会連合会、公益財団法人マンション管理センター、NPO法人全国マンション管理組合連合会宛て。通知で示した事例は、同省・マンション政策室が実施した工事発注に関するヒアリングで得られた証言等を引用した。
(マンション管理新聞:平成29年2月5日付)
◆◆◆◆◆
※①指摘されている事例
・最も安価な見積金額を提示したコンサルタント業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントの職員でなく、施工  会社の社員であったことが発覚した。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送られた。なお、同コンサルタンとのパンフレットには技術者が多数所属していると書かれていたが、実質的には技術者でない社長と事務員1人だけの会社であった。
・設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積もりが低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事を伝え、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務の辞退を申し出た。このため、別の設計事務所と契約したところ、辞退した設計会社の作成していた工事項目や仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直すこととなった。
・一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。

※②取り組み事例
○利益相反的な提案をしてきた設計会社を除外して選定した事例
・管理会社において、公開資料に記載の実績等を基に3社に見積もりを依頼し、設計会社を決定。3社のうち2社は、設計費は安価だったものの、工事とセットでの契約が条件となっており、かえって高額になるため、選定されなかったもの。 管理組合において、新聞・雑誌・経験上の知識等の情報を基に15社に見積もりを依頼し、うち7社から見積もりが提出され、金額・内容・実績等を勘案し、上位2社に絞り込んだ。工事項目の絞り込みなど工事費の削減に向けた提案を行った施工会社を管理組合が決定。
○施工会社を公募など透明な形で募集し、理事会における投票・審議など公正な手続きの下で決定した事例。
・設計会社は、公募および紹介に基づく13社のうち、5社に関して管理組合の担当役員が個別面談を行い、予算超過であった最高値の会社と、設計業務を十分に行えないと考えられる額であった最安値の会社を除外し、3社に絞り込み、組合員で設計に詳しい者と相談しつつ、理事会の過半数賛成となるまで、理事会投票を数次重ね決定。施工会社は、管理組合からゼネコン6社に提案を依頼し、書類審査により3社に絞り込み、理事会投票を数次重ね決定。
・設計会社は、管理組合において、従前から理事会のアドバイザーに就任していたマンション管理士の協力を得ながら、管理組合団体や他の管理組合からの紹介に基づき候補5社を選定し、提出された見積金額・実績・会社規模等を勘案して1社に絞り込み、定期総会で承認。施工会社は、専門紙で公募し、5社に現場を案内した上で、見積金額・実績・工事内容・会社規模・アフターケア等を勘案して管理組合の担当役員が1社に絞り込み、臨時総会で承認。


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