『安易に決議、後が大変に』、議決要件緩和をどう考える~規約改正をテーマにコミュニティ研究会フォーラム2025.12.8開催~
マンションコミュニティ研究会(コミ研、廣田信子代表」は12月8日、マンション標準管理規約の改正をテーマにしたオンラインフォーラムを開いた。横浜マリン法律事務所代表の佐藤元弁護士が、「区分所有法改正・標準管理規約改正への管理組合の対応」のタイトルで基調講演。パネルディスカッションでは、区分所有法改正による特別多数決議の要件緩和をどう考えるかを中心にパネリストが意見を述べた。
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コミ研が会員らに行ったアンケートでは、特別決議の「出席者多数決議方式」は「管理不全マンションには有効であり無関心な住民を除くというのは理にかなっている」「健全な運営をしてきたマンションでは『少人数で重大事項が決まる』、『独裁的運営に悪用される』可能性を懸念」といった意見があった。今回の区分所有法改正では普通決議、「区分所有者・議決権の各4分の3以上」の特別多数決議の要件を緩和、(下記の表に一部条文例)従来75%の賛成が必要だった事項は「過半数の4分の3」、39%の賛成で可決できるようになった。ただ、定足数は規約で強化できる旨規定されている。
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● パネルディスカッションでは、まず植田雅人・一般財団法人日本マンション学会理事が「決議をしやすくなるということは見方を変えると反対者が多くても議案が承認されるということ」と指摘。今回の改正で法律でも担保されることになった「一体的改修」など、専有部分の立ち入りが不可欠で実質的に「全員合意」を取らなければ進まない事業を例示した上で「簡単に決議ができるからといって安易に決議してしまうと、その後の運営が大変になってくる」と述べた。
●廣田代表は、改正法が特別決議の定数について「区分所有者と議決権の数を過半数、かっこで『それを上回ることはできる』っていうふうに書いてある」と指摘。その上で「今回の標準規約の改正では、そのではその部分(についての言及)がないので過半数(の出席)で決めてしまう、っていうことが起こりがちなのかなということがすごく気になる」と、丁寧な合意形成が失われる不安を口にした。佐藤弁護士は、建て替えなど基本的には「5分の4」を目指さなければならない場合、「普段の決議で、最低限の39%でやってましたっていうとき、果たして8割の合意が取れるか。やはり普段からの合意形成をしっかり頑張ってないと大きな決議はできないことになる」とコメント。管理だけでなく、再生を円滑に進める意味でも普段の合意形成をできるだけ丁寧に進めておくことが重要なんだろうというふうには考えている」と述べた。
●小杉学・明海大学不動産学部教授は、要件が一般化してしまうと「それ以上上げていくことが悪いこと、無理なことをしているみたいな印象になってしまうのもいかがなものか。何かしら頑張っている管理組合さんがこれまでの頑張りを維持できる方法があったらいい」とコミ研内部でそんな議論があったことを紹介した。
●藤木賢和・NPO法人全国マンション管理組合連合会理事は「管理が行き届いているマンションには39%で可決される、『この数字は低すぎるという意見も納得できるところもある」。一方で「管理が停滞していて普通決議の定足数も集まらないで苦労しているマンションも結構あるという事実がある」と実状も報告した。
●瀬下義浩・一般社団法人日本マンション管理士連合会会長は、今回の法改正の狙いは「管理不全化」を防ぐことにあると思う、と述べ、「日本は何か悪いことがあると、それを救うためにレベルを下げる面がある」と話した。
●内藤正裕・コミ研理事は「管理不全のところにとっては救世主、みたいな感じでいいと思うが、きちんと管理をして丁寧に合意形成を図ってきたマンションをとってみると『今回の改正って改悪じゃないか』と思われるところもあると思う」と述べた。
●松田昌也・コミ研副代表は「無関心、人任せの人たちに判断、つまり議案への賛否の意思表示の投票を促すという方向は引き続き堅持すべきでとても大事なことと思う」とコメント。自身のマンションでは特別多数決議の定足数を増やすことも検討する、と話した。
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集会決議の定足数・決議要件(区分所有法:2025年5月改正規定から抜粋)
| (共用部分の変更)区分所有法第17条1項 共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、集会において区分所有者の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあっては、その割合以上)の者であって議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあっては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者およびその議決権数の各4分の3(これを下回る割合(2分の1分を超える場合に限る)を規約で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数による決議で決する。 ◆ (規約の設定、変更および廃止)同法第31条1項 規約の設定、変更または廃止は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項前段において同じ)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあっては、その割合以上)の者であって議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する者が出席し、出席した区分所有者およびその議決権数の各4分の3)以上の多数による決議で決する。 ◆ (議事)同法第39条1項 集会の議事は、この法律または規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しない者を除く)およびその議決権の過半数で決する。※改正後の条文を一部抜粋。 ほか管理組合法人の設立・解散、義務違反者に対する専有部分の使用禁止請求・区分所有権等の競売請求・専有部分の引き渡し等請求、管理組合法人による区分所有権等の取得、復旧についても、同様に規約による定足数強化(傍線部分)が認められている。普通決議に関しても強化等は可能。 |
(マンション管理新聞:令和8年1月5日付の記事より抜粋)
以上
