区分所有法等改正案が5月15日、衆院本会議で可決~修正案・付帯決議案を可決、「共用部分の損害賠償請求問題は「標準規約を早期に改正」へ~
区分所有法・マンション管理適正化法などの改正案が5月14日、衆院国土交通委員会で、修正のうえ、与野党の賛成多数で可決された。委員会は、管理者による共用部分の損害賠償請求権の代理行使について早期に標準管理規約を改正し、損害賠償金の使途を定める旨の規定を設け、速やかに改正が行われるよう関係機関に働き掛けを求める付帯決議を可決した。修正案を含む改正法案は、5月15日、衆院本会議で可決された。
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5月14日は法務委員会との連合審査会も開き、午後の委員会で可決した。共産・れいわ・有志の会は反対。修正案は城井崇氏(立憲)ら、徳安淳子氏(維新)がそれぞれ提出。立憲提出案が賛成多数で可決された。
修正案は委員会審議で最大の論点となった「共用部分に係る損害賠償請求権の行使」について、改正法施行後5年をめどに標準管理規約による対応状況や同問題に対する相談体制の整備など紛争予防・解決策を検討する旨を付則に規定する内容(下記の修正案を参照)。
付帯決議案は自民・立憲・国民民主・維新の4会派が共同提案。「共用部分に係る損害賠償請求権の行使」に関し標準管理規約の改定を早期に行う▽規定の制定状況の把握に努める▽規定が設けられず旧区分所有者が「別段の意思表示」を行い損害賠償金の一部が修繕積立金修繕費用に充当でいなかった事例の把握に努める—などの措置を講じるよう求めた。(同様に下記の付帯決議案を参照)
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上記以外で、管理業者管理方式では、改正法で規定される「事前説明」の確実な実施、ガイドラインを踏まえた対応を行うことについて、周知徹底を図る、とした。また、管理不全マンションの支援や「マンション管理適正化支援法人」への登録働きかけなども盛り込んだ。
修正案の内容
本法の付則に「政府はこの法律の施行後5年を目途として改正後の区分所有法第26条第2項に『別段の意思表示』等に係る規約の設定または変更の状況ならびに同項に規定する保険金等の請求および受領の状況等を勘案し管理者または区分所有者もしくは区分所有者であった者からの相談に的確に応じることのできる体制の整備その他分譲マンション等の共用部分の補修等に係る紛争の予防および解決のための方策について検討を加え必要があると認めるときはその結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」旨の規定を追加する。 」 |
付帯決議案
1,管理者による共用部分に関する損害賠償請求権の代理行使に当たり旧区分所有者の取り分を含む損害賠償金を確実に修繕費用に充当することができるよう損害賠償金の使途を定めることを内容とする標準管理規約の改定を早期に行い各管理組合において管理規約の改定が速やかに行えるよう関連団体等を通じて働きかけを行うこと。一方でそもそも管理組合自体がない等管理不全マンションの区分所有者に対しても必要な措置を講じること
2,標準管理規約の改定を踏まえ、各管理組合の管理規約において、共用部分について生じた損害賠償金の使途を定める規定の制定状況の把握に努めること。また管理規約に同内容が規定されなかったこと等により旧区分所有者による別段の意思表示が行われた結果、損害賠償金の一部が修繕費用に充当できなかった事例の把握に努め、必要に応じ所要の措置を講じること 3,マンションの管理や再生が円滑に行われるよう地方公共団体、管理組合、区分所有者等に対し本法により区分所有権の処分を伴わない決議や集会への出席者による多数決で可能となることやマンションの再生等に活用可能な事業手法が増加すること等について周知徹底を図ること 4,管理不全マンションの増加を防ぐため、マンションの管理水準向上に資する管理計画認定制度が新築時から積極的に活用されるよう分譲事業者に対し管理計画の作成を積極的に促すこと。また管理水準の高いマンションの資産価値が適正に評価されるよう市場環境の整備に努めること。 5,管理組合自体がないような既存の管理不全マンションについては管理組合の設立から管理計画の策定、および実施に至るまで地方公共団体が伴走支援を行うよう働き掛けを行うこと 6,マンション管理業者が管理事務、および管理者事務の双方の委託を受けている場合、利益相反により区分所有者が不利益を被ることがないよう本法に規定された事前説明の確実な実施に加え、マンションにおける外部管者方式等に関するガイドラインを踏めた対応を行うことについて関連団体等を通じて、周知徹底を図ること 7,マンションの再生事業等により新たに住まいを確保する必要がある場合には高齢の区分所有者や 借家権者など住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保を十分に図ること。また、公営住宅等の公的賃貸住宅の活用が図られるよう地方公共団体への的確な支援に努めること 8,マンションの管理および再生に当たっての助言指導や勧告、再生事業等の認可などに当たっては地方公共団体が担うマンション関連事務が増加することからマニュアルの整備やマンション政策の担当者の育成支援など、その負担軽減のために必要な措置を講じること 9,マンションの管理および再生に当たっては知識や経験を有する民間団体を積極的に活用するため十分な数のマンション管理適正化支援法人が確保されるよう関連団体に対し登録の働きかけを行うこと。また、管理組合等に対しマンション管理適正化支援法人の活用方法等について分かりやすく情報発信を行うこと |
*マンション管理新聞(2025年(令和7年)5月15日号)の記事より掲載。
以上