「役員選任範囲の緩和」も。【標準規約見直し検討会(国交省、8/8開催】~総会の定足数「過半数」に変更も視野に。“なりすまし”の本人確認は「顔写真付き身分証明書」の例示など~

投稿日:2025年09月02日 作成者:右田 順久 (21 ヒット)

区分所有法等の改正を受け、マンション標準規約の見直しを進める検討会の第2回会合が8月8日に開かれた。この日は法改正以外の「社会情勢等を踏まえた見直し」について条文・コメント文案も提示。前会合で示した見直し案の修正箇所や、共用用部分に係る損害賠償請求権の行使についての条文案も示した。管理組合役員の選任範囲については。必要に応じ区分所有者の家族・親族も選任できるなどの要件緩和も考えられる、とコメントで言及。「なりすまし」事案を受けた「本人確認」は運転免許証.、パスポート、マイナンバーカード等の「顔写真付きの身分証明書」を例示。外部専門家の場は併せて専門家の資格に係る身分証明省の提示を求める、などとした。
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【前回示した見直し案の変更について等】
・まず総会の議決要件について言及。現行は総会の定足数を議決権総数の「半数以上」と定めているが、改正法は特別決議の定足数として区分所有者・議決建装数の「過半数」と規定。委員     から「半数以上」と「過半数」が混在する点が「混乱を招く」との指摘があった。このため現行の普通決議の定足数(半数以上)も「過半数」に変更するかどうか、さらに検討する。総会における議決権行使書・委任状等は、新たに「理事長が保管する総会資料」に位置付ける。
・共用部分の変更に際し、決議要件が緩和される「共用部分の設置または保存に瑕疵があることによって他人の権利・法律上保護される利益が侵害されもしくは侵害される恐れがある場合」を例示。具体例として▽地震・火災に対する安全性の不足▽外壁等の剥落で周辺に危害が生じる恐れ▽配管設備の腐食等で著しく衛生上有害となる恐れがある場合を示した。従来の「要除却認定」に当たる。
・国内管理人の選任に関する届出書の様式を示した。管理人の権限を明記し緊急連絡先等も記載する。
・「所在等不明区分所有者」では、管理人が議決権を行使した場合、管理人数・議決権数を総会の頭数に加える旨を追記。「管理不全専有部分管理人」では、法定要件の「管理が不適当で他の区分所有者の権利・法律上保護される利益が侵害され、または侵害される恐れがある場合」を削除した。国土交通省住宅局(マンション・賃貸住宅担当)付は「裁判所が判断する話なので規定する必要はないという委員の意見を受けて削除に至った」と説明している。
・また標準管理規約に合せて管理規約を改正する場合、改正法施行前・施行後で手続きが異なるため、それぞれ対応の例示を検討する方針案が示された。

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【第2回会で検討された見直し案の条文・コメント案について】
第2回会合では、修繕積立金の使途・共用部分等に係る損害賠償請求権の代理行使・管理組合役員に選任可能な者の範囲・管理組合役員等の本人確認・管理組合が取り組むべき防災関係    業務・マンション内での喫煙ルールにおける条文またはコメントに案に関して審議された。
◆修繕積立金の使途
運用に際し積立金を充当できる旨を確認的に規定。建て替え同様、改正区分所有法で創設された再生等に係わる調査などにも充当できる形に改正する。積立金を保管する預金口座の残高証
明書取得費用、印紙税や振込手数料といった工事に関する諸費用は管理費からも支出できる旨を、条文コメントで規定した。共用部分等に係る損害賠償請求権の代理行使
◆共用部分等の損害賠償金の代理行使による損害賠償金について修繕費用に充当する旨を追加。区分所有権が譲渡された場合に備え、区分所有者が損害賠償請求権を行使する「別段の意思表
示を行わない」ことを設ける。条文は示されていないが、資料では区分所有者当該請求権を「個別行使しない旨の規定を設けることを検討中」としている。
◆管理組合役員に選任可能な者の範囲の見直し家族や親族など役員の資格要件を緩和する場合、配偶者や内縁者、「〇親等以内の親族」など選任できる範囲を明確にすることを条文コメントに
追加。
◆管理組合役員等の本人確認
「なりすまし」事案を受けた役員等の本人確認では候補者に運転免許証などの「顔写真付きの身分証明書」を求めることに加え、外部専門家の場合は資格に係る証明書の提示も求める方法を
コメントに追加する。
◆マンション内での喫煙に関するルールの整備
喫煙の関するルールでは、使用細則で ベランダなど共用部分について認めるか否か、また認める場合に受動喫煙被害を及ぼさないために守るべき事項とともに違反者への措置を定めるこ
とができる旨をコメントに設ける。専有部分も、望まない受動喫煙を防ぐ観点から周囲の譲許に配慮した方法での喫煙が望ましいと言及。「細則に規定を盛り込むことも考えられる」として
いる。
◆その他
・会社法等の規定に合せ欠格事項の「精神機能の障害で必要な認知・判断ができない者」を削除。
・管理組合の業務に「防火管理者の選任を確認的に設ける。居住組合員の親族や賃借人なども選任可能な規定とする考えをコメントに追加。防災マニュアルや訓練など業務の内容も示す。

 

*マンション管理新聞(2025年(令和7年)8月15・25日合併号記事)より抜粋掲載。
以上


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