投稿日:2015年04月04日 作成者:右田 順久 (5098 ヒット)
国土交通省は3月27日、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)を開き、報告書案が了承された。同省では、報告書案で示されたパブリックコメント素案に基づき、5月初旬前後をめどに意見公募手続きを行い、夏頃までにマンション標準管理規約改正を目指す。「新たな管理ルール」として踏み込んだ内容を示す一方、現行の運営方法も認め、管理組合にとって選択肢が広がる形となる。
検討会は今回で終了。報告書案は標準管理規約・コメントの改正対象となる14項目をピックアップし、問題認識や考え方を提示。パブリックコメント素案も盛り込んだ。管理組合を財産管理団体として強調し、管理者の責務を財産的価値の最大化追求としてとらえている点が特徴だ。
外部専門家活用では理事会存否も含め3パターンを提示。役員規定に新たに欠格要件を設け、会社法等を参考に理事長の理事会への定期報告義務、監事の理事会出席義務等も規定する考え。修繕など管理業務の受発注では、利益相反取引防止の観点から選定に関する「ガイドライン」策定を提案。外部専門家の派遣制度・保険加入の整備を指摘している。
理事会における議決権の代理行使では、配偶者等の代理出席を「望ましくない」と示しつつ、最高裁判決を踏まえ規約明文化による代理出席は可能としている。
総会の議決権割合では、超高層を想定に階数・方角等の価値を反映した価値割合議決権を選択肢に加える。
コミュニティに関する条項は削除する。
会計など管理に関する情報は、財務書類など適切な文書作成・保管に対する理事長の責任を明確化する。管理費等の滞納対策では、滞納発生の場合、管理組合による財産調査に対する同意規定の設置を盛り込む。各種措置はフローチャートで参考提示する。
駐車場の使用方法は公平さに配慮し、定期的な入れ替えなど各種方式を示す考え。
専用部リフォームでは理事会承認を必要とする範囲等を列挙。上下左右階の承認は「過度な運用」とし、窓改修等も理事会承認方式に改正する。保存行為は具体的に例示し、各組合員による単独判断実施の禁止を明文化する。
災害時における理事会決議による応急工事実施や、緊急時における重大な影響を与える恐れがある場合の専有部分等への立ち入りは認める。
会計年度開始時期から総会開始までの支出に関し、理事会承認と総会報告の手続きを明文化する。
当日、委員から「役員を資質・能力等に着目して選任するというが、実際は輪番制が一般的で、現実と乖離しているのでは」という指摘もあり、「新たな管理」がどの程度普及するかは未知数だ。
(マンション管理新聞:平成27年4月5日付)
投稿日:2015年03月26日 作成者:右田 順久 (2118 ヒット)
いわゆる「団塊の世代」がすべて後期高齢者になり、 65歳以上が全人口比の30%を超える「2025年問題」を見据えた、マンション管理の将来ビジョンを検討する「マンション2025ビジョン懇話会」(座長:斎藤広子明海大学不動産学部教授)が3月16日、東京・霞が関で開かれたシンポジウムで提言をまとめ、発表した。マンション再生の推進や高齢化対策など5点について、関係団体の取り組みを求めた。
提言は①マンション再生の推進、②居住者の高齢化への対応、③資産価値の維持・向上のための施策の構築、④マンションの多様化に備えた他業態との新たな連携、⑤マンション管理の新たな債務ーの5点。
①では耐震・省エネ・バリアフリー改修といった再生メニューの長期修繕計画への組み込み、資金計画対策、再生内容に応じた議決要件の設定、②では認知症や在宅介護等の知識と当事者の人権に配慮した対応ができる情報収集と、情報収集におけるルールの整備の必要性、地域との連携などについて言及。
③ではマンションが立地する町全体を盛り上げて付加価値を高めたり、市場評価につながるマンション再生の実施や情報提供の促進、④ではマンションの多様化に伴い、管理業者がサービスを提供する場合は積極的な他業態との連携が、それぞれ必要だと訴えた。
⑤では管理業者らに、管理を通じて得たノウハウやアイデアが共用部分設計に組み込まれるよう、開発業者らに提案すべきだとした。
懇話会は有識者10人で組織。一般社団法人マンション管理業協会(管理協、山根弘美理事長)が2011年に設置した「マンション長寿命化協議会」が前身で昨年、管理協の諮問を受けていた。
当日は、斎藤広子座長が山根理事長に提言を答申した。山根理事長は「先延ばししない。自分の親、子供、マンション、地域、国の問題としてしっかり取り組んで行きたい」と述べた。
(マンション管理新聞:平成27年3月25日付)
投稿日:2015年02月27日 作成者:右田 順久 (2411 ヒット)
総務省は2月16日、第4回「都市部におけるコミュニティの発展方策に関する研究会」を開き、報告書構成案を示した。
今後の方向性として管理組合をコミュニティー活動の主体として明確化する考えを示した。区分所有法を根拠とする管理組合に、総務省があえてコミュニティ活動の主体としてお墨付きを与える形。区分所有者と世帯主(居住者)が一致しないマンションにおける課題言及はなかった。次回の3月24日の会合で報告書をまとめる。
方向性案では、管理組合をコミュニティ―活動の主体として明確にし、「行政が協働する地域のパートナーとして、自治会等に加えて管理組合を位置付ける」。その発展形に自治体による管理組合への活動支援、マンション同士の情報交換の場の創出を挙げている。
これまで管理組合の支援活動は建物の維持管理等の観点から国土交通省や自治体の建築部局等が行っているが、自治体のコミュニティ―担当部局を含む「自治体による部局横断的なマンション支援体制の構築」を提言している。
防災面のマンションと地域の連携は有効とし、まちづくり協議会などマンションを含めた地域の組織設立推進も示した。主な議論では「管理組合の本来の役割は財産管理であるが、それにとどまらず住民同士の横のつながりを作る活動をすることが望ましい」との価値観を提示している。
研究会では自治会・町内会の加入率低下、役員の担い手不足等を背景に都市部のコミュニティーの新たな担い手として管理組合に注目。任意団体ではない管理組合の人的資源や頑丈な建物に期待を寄せるが、管理組合も高齢化や外部区分所有者の増加など担い手不足の課題を抱えている。
コミュニティー問題は活動費や管理組合業務との関係をめぐり国土交通省でも議論。標準管理規約のコミュニティ―条項削除を検討するなど、総務省の方向性とは一致していない。管理組合の活動を決めるのは誰か。議論を呼びそうだ。
(マンション管理新聞:2015年2月25日付)
投稿日:2015年02月06日 作成者:右田 順久 (5491 ヒット)
公益財団法人マンション管理センターは1月26日、『マンション管理組合で作成する名簿の取り扱いに関する細則について』を発売した。
管理組合が作成する名簿の種類と作成にあたっての留意点、取扱いルールなどをまとめ、細則モデルを示した。
同書は管理組合が作成する名簿として、主に総会の招集や管理費等の請求などに利用する「区分所有者名簿」、建物の利用方法等で区分所有者と同一の義務を負う占有者の情報を得たりするために必要な「居住者名簿」、災害時の救助活動などに利用する「要援護者名簿」を想定した。
区分所有法やマンション標準管理規約、マンション使用細則モデル、マンション標準管理指針といった関連法令・ルールから名簿の作成根拠を提示。名簿を作成する上での留意点をまとめた上で、第三者への提供や作成の方針、安全性と利便性、公開性等に言及した「策定方針」と併せ、各名簿の取り扱いに関するモデル・コメントを提示している。
細則モデルは、「区分所有者」「居住者」「要援護者」の各名簿に応じ、それぞれ用意した。作成根拠になる管理規約の条文や利用の目的、名簿の掲載事項等に、それぞれ違いがあるからだ。
添付資料とし、マンション使用細則モデルや個人情報保護法、避難行動要支援者の避難行動支援に関する取り組み指針の抜粋も収録している。
(マンション管理新聞:平成27年2月5日付)
投稿日:2014年12月19日 作成者:右田 順久 (2982 ヒット)
12月24日のマンション建替え等円滑化法施行を控え、国土交通省は「基本方針」、省令、容積率緩和特例に関する許可準則を公表している。
基本方針と省令はパブリックコメント募集時と概ね同じ内容。許可準則は「マンション建替型総合設計制度」を新設し、容積率割り増しの基準を示している。
基本方針は12月10日付けで告示。同日付の官報に掲載されている。9月4日にパブコメで示した案と内容はほぼ同じだが、容積率特例許可を行う際の地方公共団体に対する努力規定に「地域の事情を考慮しつつ」の文言が加わった(第6の3のハ)。管理組合には買い受け人選定の際、選定手続きの「透明かつ公正」な実施が求められている。
省令は11月28日付官報に掲載されている。8月27日のパブコメ案と比べ、若干順序の変更等はあるが、内容に大きな変更はない。書式では、特定行政庁から都道府県知事への除却認定通知書が追加された。特定行政庁等による認定や敷地売却事業に関する手続きの規定が大半を占める。
◇
法105条の容積率緩和特例に関する運用については12月5日、市街地建築課長名で各都道府県に通知した。
内容はマンション再生協議会のサイトで公表している。総合設計許可準則を改正し、「マンション建替型総合設計」を新設。地域の防災、環境等向上に資するものとして、「地域で活用できる防災備蓄倉庫設置、防災広場、地域に開放されたコミュニティ形成のための集会所、地域の子育て施設、高齢者向け福祉施設、地域の状況に応じた特定行政庁が定める取組み等」を挙げ、施設等の確保が必要と認められる場合、整備に応じた容積率割り増しが可能となる。公開空地設置は必要条件ではないが、高さ制限、斜線制限緩和の適用はない。容積率割り増しの程度は技術基準で提示した。非住宅部分の床面積が過大とならないよう許可方針も定めた。
「最終的な緩和の程度は自治体の裁量次第」(マンション政策室)と話している。
(マンション管理新聞・平成26年12月15・25日付)
投稿日:2014年11月16日 作成者:右田 順久 (1942 ヒット)
住宅金融支援機構は11月5日、2014年度の「マンションすまい・る債」の募集結果を発表した。
10万口・500億円の募集枠に対し、応募口数は5万7520口。13年度比124.7%で、応募率は57.5%と、13年度比で11.4ポイントアップした。
応募率が5割を上回ったのは、ペイオフ解禁された05年度以来。ペイオフ解禁時を除くと、00年度の制度創設以降、今回が最も応募率が高い。応募組合数は1607組合。13年度比で106.4%と、組合数も増加している。
(マンション管理新聞・平成26年11月15日付記事から抜粋)
投稿日:2014年10月27日 作成者:右田 順久 (2079 ヒット)
東京都は10月6日、住宅政策審議会マンション部会の第3回会合を開いた。会合は非公開。
15日公表の資料によると、都はマンション管理適正化施策基本的考え方として、良好な管理など「管理組合の努力が報われる市場の形成」が必要と指摘。「マンションは高い社会性を有している」とし、管理組合の適正化管理への努力や管理情報開示を「社会に対する義務や責任」と位置づけ、行政による管理組合の取り組み支援は必要、としている。
区市町村との連携では、都が施策推進の基本方針を定め、区市町村による管理組合への支援・指導を支援するとの考えを示した。
第2回会合の議事録では、市場の活用を求める意見に対し、「実際は煩雑な売買はなく、マンション管理は静かで別の話」と、市場活用の実効性に否定的な意見も示された。都に条例化を求める意見も紹介されている。(マンション管理新聞・平成26年10月25日付)
投稿日:2014年10月18日 作成者:右田 順久 (2274 ヒット)
国土交通省は10月6日、「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」を改定した。
既設の装置について、製造者や管理者等を交えた「協議の場の設置」等の取り組みを示している。3月28日に策定したガイドラインに新たに「関係主体間の連携・協働による取組み」の章を設け、3項目を追加した。
1つは既設の既設の機械式駐車装置を対象に、駐車場施設ごとに協議の場を設け、製造者、保守点検事業者、設置者、管理者、利用者が連携して安全対策(施設改修、安全利用の推進、利用者への教育訓練等)に取り組むこと。
2つ目は協議の場で製造者、保守点検事業者は安全な利用方法など必要な情報・知見の提供を行い、設置者、管理者は製造者、保守点検事業者の主体的な参画の下、利用者に教育訓練を字資すること。
3つ目は利用者の適正な利用の心掛け。改定した都市局街路交通施設課によると、「イメージとしては管理組合の理事会や総会のような場にメーカーやメンテナンス業者が出向き、安全対策の説明を行うこと。
立体駐車場工業会では事故事例の関する動画も用意してある」と話す。ガイドラインは管理者等が安全対策に取り組む際の手引き。今回の改定は消費者庁の消費者安全調査委員会が、7月に発表した報告書で国交相と消費者庁長官に求めた意見を盛り込んだ形。2007年6月から2014年7月11日までマンションの機械式駐車装置で13件の事故が起き、7人が死亡、うち3人は子ども。
(マンション管理新聞平成26年10月15日付)
投稿日:2014年09月16日 作成者:右田 順久 (2509 ヒット)
国土交通省は9月10日、第2回住宅団地の再生の在り方に関する検討会を開いた。3人の有識者が提案説明を行い、早くも団地再生事業法の創設が提案された。次回10月は別の有識者が説明を行う予定だ。
◇
前UR都市機構理事の大西誠委員は郊外型大規模団地の再生課題について、需要以上の保留発生、建築基準法86条の「一団地認定」解除に伴う全員合意、公正な容積設定方法などを説明。その上で、長谷川洋国土技術政策総合研究所住宅性能研究官が以前から提唱している団地再生事業法について触れ、多様な要望を実現できるとして同法の創設が必要と提案した。
宮原義昭委員は団地再生への市街地再開発事業応用の可能性と課題を説明し、土地の高度利用を前提とする市街地再開発事業と郊外団地の立地の違いに触れ、「物理的な高度利用ではない概念」の導入の必要性を指摘した。
外部識者では自力建替えを行った旧町田山崎団地の西木實コンサルタントが経緯などを報告した。大西氏の提案した団地再生事業法はアイデアの紹介にとどまり、同じ敷地に建替え・改修・現状維持が共存するイメージが示された。
質疑では「事業法の創設はいいとしても、そもそも団地が判断できる仕組みが不十分なので、その仕組みをどうするか、私法プラス公法でいくのか。いっそ公法からスタートするのもい一つの方法」「イメージ図は理想的だが、建替えと既存の棟との売却益の公正な配分方法や敷地の分割など、団地再生事業法はまだ乗り越えるべき課題が多い」等の意見が出た。長谷川氏が提要する団地再生事業法は所有者による団地再生計画決議、行政が都市計画決定する仕組みだが、団地再生事業を都市計画事業おする際の「公共性」判断の根拠が課題の一つとされている。
(マンション管理新聞平成26年9月15日付)
投稿日:2014年08月07日 作成者:右田 順久 (18195 ヒット)
移動体通信業者と契約を結び、屋上に携帯電話基地局を設置し収入を得ている管理組合が、税務署から所得の“申告漏れ”を指摘されるケースがここ1,2年増えている。国税庁は、こうした収入は「法人税法上の収益事業に該当する」として、法人税の課税対象になるとホームページ上で告知している。
告知がホームページに掲載されたのは、国税庁によれば7月25日。税法・解釈などに対する対する国税庁の解説・見解等を示す質疑応答事例」に、携帯電話基地局設置に関する項目を加えた。題名は「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」。掲載理由について国税庁課税課監理2係は「こうした案件について、一部の管理組合で申告漏れが数件あった。同様の取り引きが多数見込まれるということで、注意を喚起した」としている。
事例では、携帯電話基地局の設置について業者と建物賃貸借契約を結び、設置料収入を得ることになったが、設置料収入は「法人税法上の収益事業に該当するのか」と質問。質問に対しては、管理組合などの「人格のない社団」に対する法人税は「収益事業から生じた所得のみに課される」と解説した上で「管理組合が賃貸借契約に基づいてマンションの一部を他の者に使用させ、対価を得た場合には収益事業たる不動産貸付該当する」と回答した。「収益事業から生じた所得には法人税が課税される」と結論付けている。
設置料収入は消費税の課税対象にもなる、とした。告知では、前々年度の課税売上高が1000万円以下の場合は当該課税期間、つまり前年度の納税義務は免除されると解説している。ただ昨年1月以降に事業を始めた場合は、前々年度の課税売上高が1000万円以下でも、前年度の事業開始から6か月間の課税売上高が1000万円を超えれば課税対象になる、としている。事例は国税庁ホームページの「税について調べる」→「質疑応答事例」→「法人税」の収益事業項目に掲載されている。
今回の注意喚起は、携帯電話基地局の設置で管理組合が得る賃料収入に対して税務署のチェックが入るケーㇲが増えていることを示しているといえそうだ。そうしたチェックで申告が行われていない実情が認識され、注意喚起につながったと考えられる。
(マンション管理新聞:8月5日付)